2019年10月、木徳神糧株式会社は、国産米粉にアメリカ産ホワイトソルガムきび粉をブレンドした業務用米粉パン「魔法の米粉ぱん」の販売を開始しました。今回のClose up Interviewでは、開発を担当された厚澤信義さん、伊藤克明さんにお話をうかがいました。
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木徳神糧さんというとやはりコメがまず思い浮かぶのですが、どのような経緯でパンを製造することになったのでしょうか。
厚澤さん(木徳神糧)
弊社はコメがメインの会社になりますが、新潟に食品安全規格であるFSSC22000を取得している米粉工場を持っています。そこで製造している米粉を原料に米菓、焼菓子、洋菓子など付加価値商品のラインナップの拡充を方針に商品開発を行っています。その一環で美味しい米粉パンを作れないかということになり、米粉パンの開発にかれこれ10年ほど取り組んでいました。
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10年ですか!ホワイトソルガムきび粉はどのように知りましたか?
厚澤さん
米粉パンの開発は、元パンメーカーOBの職人、片山さんがこの10年の間、日々いろいろとレシピを工夫しながら取り組んできましたが、米粉パン開発も後半になると、従来のずっしり・もっちりした重い米粉パンからは脱して、軽い食感の米粉パンを作れるようになっていました。しかしあと一息、さらに小麦に近いパンを目指して模索していた時に、欧米ではグルテンフリーのパンにホワイトソルガムきびの粉をブレンドしているという情報にたどり着きました。そして日本でアメリカ産ホワイトソルガムきびのプロモーションを展開しているアメリカ穀物協会さんに連絡をして情報をいただき、試作をスタートしました。
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ホワイトソルガムきび粉を従来の米粉パンに入れてみて、どうでしたか?
厚澤さん
従来の米粉パンの課題は「ずっしり・もっちり」した食感を「ふんわり・あっさり」にすることで、これが特に苦労する部分です。ホワイトソルガムきび粉の量を多めにブレンドすることからスタートし、いろいろ配合を変えて現在の配合に落ち着き、商品化に至りました。
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米国産ホワイトソルガムきび粉が米粉パン商品化への突破口になったのですね!
厚澤さん
米粉パンは、他に配合している粉とのバランスが大切で、ホワイトソルガムきび粉が多すぎるとぼそぼそ感が出てしまう一方で、ホワイトソルガムきび粉が少ないとずっしり・もっちり感が消えません。試行錯誤の結果ホワイトソルガムきび粉の配合を最適化することができ、製造については小麦・卵・乳・えび・かに・落花生・そばのアレルゲン7品目を使用していない西東京市の米粉パン専門ベーカリー「穂乃ぱん」の代表・伊藤克明氏と提携し、この度商品化となりました。
伊藤さん(木徳神糧・穂乃ぱん)
現在は、様々な米粉パンのレシピ開発に取り組んでおり、ホワイトソルガムきび粉の配合をさらに検討することによって、コッペパン以外にもバゲットやカンパーニュなどのフランスパンをはじめとして、いろいろなパンを開発して焼けるようになりました。
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米粉パンは出来上がりの差が大きいと思うのですが、焼き方にコツはありますか?
伊藤さん
多少のコツはありますね。また、粉の挽き方にも左右されますし、グルテンがないのでやはり膨らませるための原料を加えることも必要になります。
厚澤さん
新潟の米粉工場では、一番細かい気流粉砕方式から従来の上新粉のような挽き方まで対応できます。ただ、粉は微粒であればよいというわけではなく、適切な粒径が必要です。また、米粉パンは誰でも簡単に焼けるものではありませんし、パンを膨らませるために加える材料とその量も大きなポイントです。ホテルさんやレストランさんなどは、弊社の安定した品質の米粉パンを業務用で使っていただけると、安定した品質の米粉パンをいつでもお客様に提供できて良いかと思います。
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ホワイトソルガムきび粉を使うメリットは?
厚澤さん
先ほどもお話しした通り、10年間もの開発の間、小麦粉パンにより近い米粉パン開発のために、たくさんの食材を試してきました。しかし、どれも一長一短で、米国産ホワイトソルガムきび粉に出会って、ようやく落ち着きました。配合を工夫してホワイトソルガムきび粉を米粉パンに加えることによって、より小麦粉パンに近い「ふんわり・あっさり」とした食感を出すことができ、お客様にも好評を得ています。
伊藤さん
米粉パンをめぐる状況では、最近では米粉だけでなく、ホワイトソルガムきび粉やひよこ豆粉など、他のグルテンを含まない粉を混ぜる傾向があります。
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何種類もの粉をブレンドする欧米式になってきたのですね。
伊藤さん
複数の粉を混ぜることによって、風味に深みが出ますし、ホワイトソルガムきび粉の配合などを変えることで、バゲット、カンパーニュなど多様性のあるパン作りが可能です。
また、現在の「魔法の米粉パン」は、小麦の混入のないように、私自身のベーカリーである穂乃ぱんの工房で作っています。ゆくゆくは、穂乃ぱんで販売する米粉パンも、もっと研究を重ねてホワイトソルガムきび粉を使ったものを販売していけたらと考えています。
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現在の「魔法の米粉パン」の利用状況はいかがでしょうか?
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厚澤さん
六本木のグルテンフリーのレストランのグルテンフリーサンドに、11月からメニューとして採用して頂いています。また、葛飾区のベーカリーさんは、オリジナルの米粉パンをメインに販売していますが、弊社の米粉コッペパン「魔法の米粉パン」は画期的だということで、11月からグルテンフリーコッペとして販売して頂いています。
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米粉パン屋さんも木徳神糧さんから購入しているのですね。
厚澤さん
「魔法の米粉パン」は柔らかくて軽くて美味しいとのご評価を頂き、弊社からお買い上げいただいています。弊社のコッペパンは業務用で1ケース60個入り、冷凍で半年間保存できます。他にはレストラン・ベーカリー・アレルギー対応通販会社等にも案内をしています。
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今後のホワイトソルガムきび粉入り米粉パンの展望について教えてください。
厚澤さん
地道に販路を広げて、ライン製造できるくらいのヒット商品に育てていきたいと思います。今は冷凍で卸していますが、常温でも劣化しない、固くならない、ぼそぼそしない米粉パンを目指しています。まずは米粉パンでこんなに膨らんで美味しいパンがあるということをアピールしていきたいと考えています。また、弊社本社のテストキッチンではパンやお菓子の営業許可も取得しましたので、パンやケーキなども今後販売を検討したいと思います。
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本日はありがとうございました。
厚澤信義(東京都出身)
木徳神糧株式会社(1987年入社)
企画開発室 アシスタントマネジャー
伊藤克明(東京都出身)
木徳神糧株式会社(2019年入社)
企画開発室 テストキッチン担当
卵、牛乳、小麦粉アレルギー対応、白砂糖不使用の米粉パン専門店「穂乃ぱん」代表
食物アレルギーやグルテンのことを考える煩わしさから開放されたい!という声から生まれた米粉パンを販売。2012年より食物アレルギーや日本の食料自給率の低さ、その問題を解決する米粉の活用に興味を持つ。食物アレルギーを持つ親御さんの「安心して食事がしたい」という想いを叶えるパンを作ったことが「穂乃ぱん」の原点となる。
- パンに関する問い合わせ窓口
木徳神糧株式会社 企画開発室
電話番号:03-3233-5158
- 木徳神糧株式会社 公式サイト
http://www.kitoku-shinryo.co.jp