今回のインタビューは、米国のソルガムきびの生産者の団体であるユナイテッドソルガムチェックオフプログラム(United Sorghum Checkoff Program, USCP)の理事を勤めるシェイン・スップス(Shayne Suppes)氏です。スップス氏はさる2020年(令和2年)1月に来日して、日本にも輸出されている食品用のソルガムきび生産についてのお話をしてくださいました。
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スップスさんはどちらからいらっしゃったのですか?
スップスさん
私の農場はカンザス州の西部にあります。カンザス州といえば、皆さんは「オズの魔法使い」の舞台となったことでご存知かもしれません。物語にあるように、カンザス州は米国の中西部にあるので、竜巻が起こりやすいところです。私は竜巻の被害には遭っていませんが。
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ありがとうございます。スップスさんの農場はどれくらいの大きさがあるのですか?
スップスさん
私の農場は、祖父より3代続く家族経営の農場です。今は、食品用ソルガムきびの生産者でもあります。4,850ヘクタールの広さがあります。日本では東京ドームが何個分かというのが分かりやすいと聞いていますが、1,000個分以上の大きさがあります。米国の中西部では、大きいほうですが、ずば抜けて大きいというわけではありません。
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大きい!そこでソルガムきびを生産しているのですね。ほかにはどのような農業をしているのですか?
スップスさん
カンザス州の西部は降雨量が少なく、安定して雨が降ることも見込めません。しかし、私はすべての農地で灌漑をしないで生産しています。また、作付けから収穫まで全ての作業を家族だけで行っています。毎年、ソルガムきびと種子用のホワイト小麦を約1,620ヘクタールずつ栽培しています。スップス農場におけるソルガムきびの生産量のうち、約75%は食品グレードのグレインソルガムです。実は今季、小麦で収穫まで至ったのが作付けの3割程度だったため、来季からは小麦を減らしてソルガムきびの栽培をもっと増やそうと考えています。
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収穫に使う機械や収穫したソルガムきびの保管について、他の作物が混ざらないように何らかの対応をしていますか?
スップスさん
スップス農場では、ソルガムきびの年間生産量の約半分を自分の農場内で保管することができます。保管の際には、品質が落ちたりカビの被害を受けたりしないように、温度や湿度のコントロールといった、保管の環境を整えることがとても重要で、注意深く気を配っています。また、ほかの穀物などが混ざらないように徹底した管理を行っています。小麦とソルガムきびの収穫物は、それぞれ指定しているサイロに収めていて、徹底した管理を行っています。コンバインをはじめとする農業機械もしっかりとクリーニングと洗浄を行っています。
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カンザス州は乾燥した気候で、ソルガムきび生産には苦労が多いのではないですか?
スップスさん
カンザス州は、全米の食品用ソルガムきびを含むグレインソルガム生産量の6割を栽培しており、トップの収穫量を誇っています。乾燥しているカンザス州の気候は、トウモロコシのように水を多く必要としないソルガムきびの栽培に適しているともいえるのです。
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米国の中で生産地によるグレインソルガムの生産量や品質の差はありますか?
スップスさん
たとえば、私の農場のすぐ近くの農場では、それほど距離は離れていませんが、気温や土壌の質が異なります。私の農場から少し南に位置する農場では、より砂っぽい土壌です。さらにカンザス州より西のコロラド州の方へ行くと、夜間ぐっと気温が下がる気候になります。これはグレインソルガム栽培にとって大きなダメージとなります。グレインソルガムの栽培には高温の気温にさらされることがポイントとなるのです。北や西へ行くと、気象条件が変わってくるため、おのずと生産量が変わってきます。
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ソルガムきびはどれくらい収穫できるのですか?
スップスさん
スップス農場では、1ヘクタールあたり、6.3トンのソルガムきび収穫量を目標としています。しかし、収穫期におけるカンザス州の気候は変わりやすく、毎年異なります。2018年は湿潤のため収穫が遅れましたが、2019年の収穫は、乾燥した状態のため早く終えることができました。それは良かったのですが、乾燥した状況のため単収は目標より2割低くなりましたが、その分、高品質のソルガムきびが収穫できました。スップス農場では、ソルガムきびこそが農場経営の鍵を握ると考えています。今後は、食品用途のソルガムきびの生産量をさらに増やしていく予定です。
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スップス農場では「ソルガムきびは農場経営の要であり、来季はソルガムきびの作付けを増やしたい」ということでしたが、その理由を詳しく教えてください。
スップスさん
先ほどお話しした通り、カンザス州の気候はソルガムきび生産に適しています。それに加えて、現在、食品用途としてのソルガムきびの需要が伸びており、そこで求められているのが品質の高さです。スップス農場で生産している高品質なソルガムきびは市場性があり、需要に応えられると自負しています。皆さんのようなお客様が食品用ソルガムきびをより多く買ってくださるようになったので、今後は、より一層保管の質を高めて、容量ももっと増やそうと計画しています。
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収穫したソルガムきびは、国内での消費でしょうか?それとも海外への輸出向けでしょうか?
スップスさん
国内と輸出の両方です。「届ける」という観点からすると、一番の課題は輸送コストです。カンザス州は、ソルガムきび生産量トップを誇っていますが、同時に全米のほぼ中心に位置しているため、どの港へ向かうにしても遠く、輸送コストをどうするかが課題となっています。
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カンザス州では何種類くらいの食品用ソルガムきびが栽培されていますか?
スップスさん
私は、2019年度はJ301、J300と呼ばれる品種を含めて4種類の異なる食品用ホワイトソルガムきびを作付けしました。また、ポップソルガムきびも生産しましたが、これは、種皮が硬いため、ローストするとよくはじけて、ポップコーンの小型版のようなポップソルガムきびを作ることができる、とても面白い品種です。その他、でんぷん質が高いワキシー(もち性)のソルガムきび(バーガンディ)も生産しています。ワキシーソルガムきびは、品質も収量も上げることはできました。ワキシーは、少し色がついていて、黒い点があるのが特徴です。もち性なので、アルコール醸造に適していますが、日本の方がもち種がお好きであれば、人気の穀物になるかもしれません。私の農場のポリシーは、マーケットのニーズに応えていくことを大切にすることです。日本の方に気に入っていただけたら、そのニーズに応えた生産をしていきたいと考えています。
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食品用ソルガムきびの生産を増やす意気込みに、とても感激しました。市場への働きかけについて、どうしたらよいと思いますか?
スップスさん
食品用ソルガムきびは、すべての品種について、まだ市場規模が小さいため、マーケットのニーズが追いついていないのが現状です。日本で使われているホワイトソルガムきびは、おそらくWarner902Wと呼ばれる品種をはじめとする安価なオープンマーケットの品種だと思います。これからは、米国でも海外市場でも、栄養成分や組成がいろいろと異なる品種を用途に合わせて選んで使っていってほしいです。また、ブラックソルガムきびについては、まだマーケットの需要が育っていないところがあります。しかし、アメリカ国内でも食品用ソルガムきびの需要は年々増え続けているので、今後も増産する予定です。さらに今後も、食品用ソルガムきび全体についての私たち生産者自身の勉強が必要だと思います。また、ブラックソルガムきびは栄養や成分の点で優れたユニークな穀物ですが、これらの点について、マーケットへの啓もうが必要だと考えています。
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ソルガムきびは、日本ではまだ食品として馴染みがありませんが、スップスさんは日常的にソルガムきびを使って、どのようなお料理を食べているのか、また、どうやったら美味しく食べられるのかを教えてください。
スップスさん
私は、農場から収穫後すぐに、キッチンのカウンターの下にソルガムきびを常備しています。日本でいえば主食のコメのような基本食のような感じで捉えています。私は、グルテンの耐性がないので、常にどういう料理に使えるかを模索しています。ユナイテッドソルガムチェックオフ(USCP)のウェブサイトでは、ソルガムきびのレシピや動画がアップされているので、英語サイトになりますが、ぜひご覧ください。
https://www.simplysorghum.com/
シェイン・スップス(Shayne Suppes)
米国ソルガムきび生産者の団体・ユナイテッドソルガムチェックオフプログラム(United Sorghum Checkoff Program, USCP)理事
祖父母と親戚とともにカンザス州スコットシティで農場を営んでいる。家業の農業に携わる前には、ハーレーダビッドソンの認定整備士として、南カリフォルニアとコロラドで7年間、ハーレーダビッドソンのオートバイの事業に携わる。
スップス農場は灌漑を行わず、ほぼすべて不耕起栽培の13,000エーカーの土地で、3年のうち2年で作物を栽培する周期の輪作をしている。小麦も栽培し、また小麦の種も販売しているが、ソルガムきびが経営において重要な役割を果たしている。