クローズアップインタビュー Vol.6 ナディア・サミュ氏× アメリカ穀物協会

南仏プロヴァンスで22年ミシュラン一ツ星を守る女性シェフ、レンヌ・サミュ氏を母に持つナディア・サミュ氏は、グルテンフリー食、アレルギーフリー食のリーダーとしてフランス内外で活動しているスペシャリスト。パリのグルテンフリーレストランNOGLUのレシピ開発や、有名ベーカリーのグルテンフリー・ブレッドのレシピ開発などを経て、2015年春に母レンヌ氏がオーナーシェフを務める「オーベルジュ・ラ・フニエール」を自由な料理、アレルゲンフリー食の研究及び研修所 Institut Cuisine Libre として改装し、本格的にメニュー開発、製品開発、研修と啓蒙をスタート。今回、日本での初めてのグルテンフリー・イベントのために来日したナディアさんに、ソルガムきびメニューの開発や主宰している研究所についてお話をお伺いしました。

ナディアさんのインタビューやお料理の動画も、合わせてご覧ください。

メイン食材としてのソルガムきびの使用はチャレンジングな経験

USGC
今回のいくつかのグルテンフリーメニューにソルガムきびを使用してみていかがでしたか?

Nadia
ソルガムきびは、グルテンフリーのパンやベーカリーにはいろいろな穀物粉をブレンドして入れるので、使ったことはありますが、ソルガムきびをメインとしたメニューを作ったのは今回が初めてだったので、レシピを作るために配合を変えたり、いろいろ試行錯誤を繰り返しました。
風土によって粉や水の特性が異なるため、日本に来てからも直前まで粉の配合や水分量を何度も何度も変更し、納得がいくまでやりました。ソルガムきびはクセがないのでとても扱いやすく、またスターチのようにとろみ付けに使用できるので、とてもユニークな粉だと思います。パンや焼き菓子に使用する場合、ソルガムきびは生地の質感の改善に重要な役割を果たします。大学で生化学を専攻していたので、配合を変えたり量ったりすることはとても楽しい作業でした。

USGC
その国々の粉の状態に合わせて直前までいろいろ配合を変更するとは、まさにお料理は化学なんですね。

フランスでもソルガムきびはポピュラーな農作物

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フランスではソルガムきびは通常のお料理や、グルテンフリー料理に使われていますか?

Nadia
もちろん。ソルガムきびはグルテンフリー料理に必要な食材ですし、米国と同様に南フランスでもソルガムきびが栽培されています。ソルガムきびは土壌にもとてもいい作物なんですよ。ソルガムきびは、フランス語ではソルゴー(Sorgo)といいます。

 

グルテンフリーパン作りには1つではなく、様々な粉を混ぜることが重要

USGC
今回ソルガムきびを使ったメニューにパンを紹介していますが、グルテンフリーのパンを作るのは難しいと聞いています。ナディアさんのコツなどがあれば教えてください。

 

Nadia
粉の性質を理解することが大切です。
どのグルテンフリーの粉もそれぞれ違った物性を持っていて、異なった役割を担っています。 それらを上手く配合することが私の仕事です。そもそもパンとは、古代エジプトでは水、粉、塩だけを使って焼いていました。そしてギリシャ・ローマ時代にイースト菌が加わりました。その後、生地を押したり、捏ねたりといった現在の形になりました。
もともと古代ではパンはそんなに膨らんだものではありませんでした。私の目標は、パン焼きに適したメッシュや生地の捏ね方を探すことで、私のレシピには一切添加物は使わず、自然な食材を使ってそれらを探しているうちに、どんな粉を使ってもグルテンフリーのパンのレシピが作れるようになりました。

 

レストランでは古来のパンの焼き方を再現

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オーベルジュ・ラ・フニエールで提供されるパンは、クレイポットに入っているそうですが、クレイポットを使う理由は何でしょうか?

 

Nadia
栗の粉などをブレンドしてグルテンフリーのパンを焼くのですが、鉢にいれて焼くことによって、まず最初にパンだねを温めて、それから焼き始めるというプロセスになります。古代のパン焼きのように、じっくり焼くという過程を再現しています。使っているクレイポットも家から近所の窯場で焼かれたものです。

 

有名シェフも受講している自由な料理研究所のグルテンフリープログラム

USGC
Institut Cuisine Libre(自由な料理研究所)について聞かせてください。これまでにナディアさんのグルテンフリー料理セッションを受けた有名シェフは?

 

Nadia
La Chassagnetteのシェフ、Armand Arnalなどがいます。また、エリック・カイザーのグルテンフリー・パンのレシピ開発や、製造ラインの監修なども私が担当しました。

 

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すばらしいですね。Institut Cuisine Libreには何人ぐらいの生徒さんがいるのでしょうか?

 

Nadia
テーマによって異なりますが、だいたい毎週10人前後が受講しています。特別プログラムの時などは、50名ということもあります。5月や10月は年間で一番よい季節でしかも比較的空いている時期ですので、特別プログラムを実施するには最適ですよ。

USGC
全てがグルテンフリーで天国のようなオーベルジュ・ラ・フニエール、ぜひとも行ってみたいです。

 

いろいろな形状で使用できるソルガムきびは、料理のアクセントとしても最適

USGC
最後に、ソルガムきびはどのような料理に適していると思いますか?

 

P5201268_02Nadia
粒はクスクスのように使うのがいいですね。
ソースをかけたり、タブレ風サラダにしたり。またローストしたソルガムきびの粒は、料理を引き立てるアクセントになります。ポップコーンのようにポップしたソルガムきびも大好きです。チョコレートをかけたりすると最高ですね。

 

USGC
これからもソルガムきびをグルテンフリー食材としてご愛用くださいね。
今日はありがとうございました。

 

(インタビュアー:アメリカ穀物協会 星澤)

 

今回のイベント終了後はまた新たなプロジェクトが始まるというナディアさん。
母レンヌ氏とともにキッチンに立っているオーベルジュ・ラ・フニエールは、世界で唯一のミシュランの星を獲得しているグルテンフリー専門レストラン。出される料理はすべてグルテンフリーで、コンタミネーション防止のために一切小麦などグルテンを含むものを置いていない。
食のバリアフリーを実現し、笑顔でみんなが同じ食事をとることができる食卓を目指すナディアさんの活動は、今後世界中で広がっていくことでしょう。後日ナディアさんのグルテンフリー・イベントのレポートを掲載しますので、お楽しみに。
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PROFILE

ナディア・サミュ氏

ナディア・サミュ氏1981 年フランス生まれ。
母はプロヴァンスを代表する一ツ星レストラン「オーベルジュ・ラ・フニエール」(ルールマラン村)のオーナーシェフ レンヌ・サミュ。大学では生化学を専攻。家業であるレストランのサービス、マネージメントに関わりながら、フードジャーナリストである姉ジュリアと共に食をテーマにしたオーダーメード旅行代理店「トラベル・フード」を設立。生まれつき小麦粉(グルテン)を受けつけない体質、自らのアレルギー体験を元に、グルテンフリー・メニューの開発とアレルゲンフリー食の啓蒙のため、2012 年WITH LOVE ALLERGEN FREE を立ち上げる。
パリにて、グルテンフリー・レストラン「NOGLU」(ノーグル)オープン時コンセプターとしてメニュー開発を担当。さらにブーランジェリー「エリック・カイザー」にてグルテンフリー・パンのレシピ開発、製造ライン監修に当たる。2015 年「オーベルジュ・ラ・フニエール」の一部を改装してINSTITUT CUISINE LIBRE(自由な料理研究所)を設立。メニュー・商品開発、研修を行う。
シーズン中は母レンヌと共に「オーベルジュ・ラ・フニエール」の厨房に立ち、すべてのメニューにおいてグルテンフリー食を実現。グルテンフリー、アレルゲンフリー食のリーダーとしてフランス内外で活動する。