伊豆のグルテンフリーカフェM2 、ベーカリー CUBREAD オーナーシェフ 山下由香さんに聞く「米粉パンにブレンドするアメリカ産ソルガムきびの魅力」
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山下さんは伊豆でグルテンフリーカフェとベーカリーを経営されていて、両方のお店で出されているパンにはすべアメリカ産ソルガムきび(ホワイトソルガム)が配合されているとか。
山下由香さん
はい、当店では、私自身が小麦アレルギーなので、小麦は一切使用していません。ベーカリーでは、地元静岡の米粉を主体に、ホワイトソルガムきび粉や他のグルテンフリー穀物粉をブレンドした米粉パンを作っています。そのパンをカフェでも提供しています。
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多くの米粉ベーカリーは米粉のみを使用することを好まれるのですが、すべての米粉パンに、アメリカ産ホワイトソルガムきび粉を配合しているとは嬉しいです。 ありがとうございます。山下さんは、ホワイトソルガムきびをどのように知りましたか?
山下さん
2016年にフランスのグルテンフリーシェフ、ナディア・サミュ氏のグルテンフリーベーカリーワークショップに友人に誘われて参加したのですが、その時初めて「ホワイトソルガム」きびというグルテンフリー穀物を知りました。
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2016年に表参道のカフェで行ったイベントですね。このイベントはご縁がありましてアメリカ穀物協会が後援させていただきました。山下さんのような米粉パン作りのプロの方にご参加いただけて本当に良かったです。
山下さん
イベントは人気が高くて、申し込んだ時点ではキャンセル待ちだったのですが、なんとか当日参加できました。そこでナディアさんのグルテンフリーのパン作りのデモンストレーションでホワイトソルガムきびの粉をブレンドするのを見て、驚きました。日本では、グルテンフリーのパン、イコール米粉パン、になるのですけど、それまで米粉パンを作るときに使う粉は米粉だけ、という概念がありました。
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そうですね、米粉オンリーのもちもちした米粉パンが、日本では主流ですね。
山下さん
ナディアさんのデモンストレーションでは、米粉以外に、ホワイトソルガムきび粉やサイリウムハスク、栗粉などの数種類のグルテンの含まれない粉を使用していて、特にホワイトソルガムきび粉はこの時初めて知りました。
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はい、パンが主食の欧米では、グルテンフリーのパンを作るには数種類の粉をブレンドする、という製法が普及していますね。
山下さん
イベントでホワイトソルガムきび粉を使ったフォカッチャを食べたのですが、とてもおいしかったので、自分でも作ってみたいと思いました。イベントのお土産にホワイトソルガムきび粉をいただいたので、米粉パンの仲間の皆さんと一緒に、米粉以外にホワイトソルガムきび粉やサイリウムハスクを入れた成形パンのレシピ開発を始めました。そのレシピを元に、米粉にホワイトソルガムきび粉とサイリウムハスクなどをブレンドした成形した米粉パンの焼き方が、全国に伝授されていきました。
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そうなのですね。私たちが後援したナディアさんのグルテンフリーベーキング・イベントが、現在の日本の米粉パンの製法に影響を与えていると分かって大変嬉しいです。農研機構の研究では、米粉パンを焼く際は、米粉だけではなく、ホワイトソルガムきび粉を6~30%ブレンドすることによって、米粉だけで作るパンよりも、より膨らみのよい米粉パンが出来るという研究を発表しているのですよ。
山下さん
私のベーカリーとカフェで出しているパンでは、ホワイトソルガムきび粉は、食パンには10%未満、カンパーニュなどのハード系パンには30%ブレンドしています。ホワイトソルガムきび粉は、味にくせがないので、とても使いやすいと思います。たとえば、ナディアさんのデモンストレーションでは、ナディアさんは栗粉も使うと話していたので、フランスから取り寄せてパンを焼いてみたのですが、栗粉は風味がけっこう強いので、日本人にはなじみにくい気がしました。
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イベントに際して、ナディアさん側から日本で手に入りやすいホワイトソルガムきび粉で作りたいという希望がありました。栗粉はフランスではポピュラーなようですね。ホワイトソルガムきび粉はどうでしたか?
山下さん
その点、ホワイトソルガムきび粉は日本では手に入りやすいし、味にくせがないので日本人のテイストにとても合っていると思います。ハード系のパンだと30%くらい配合していますが、グルテンフリーとは思えない、しっかりとしたカンパーニュなどが焼けます。
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山下さんは米粉パンを開発する際、どのような点に苦労しましたか?
山下さん
ねっとりしてしまう米粉をふわふわに焼き、それを数日持続させ米粉特有の匂いを軽減させるのに、とても苦労しました。
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ホワイトソルガムきび粉だと、くせのあるにおいも少ないのでいいですね。では、米粉パンにホワイトソルガム粉を配合することで、どのようなメリットを得ましたか?
山下さん
ホワイトソルガムきび粉をブレンドさせる事で、ふわふわだけでなくパンの耳の部分がサクッと焼けるようになり、匂いも香ばしさが増しました。また、米粉パンの品質を向上させるために、さまざまなコメ由来の添加物が出ていますが、コストがかさむのが現状です。ホワイトソルガムきび粉を使うと、それらを使わなくても経済的に美味しい米粉パンが作れるのも大きな魅力です。
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グルテンフリーの穀物の中では、風味や食感が一番小麦に近いといわれているのが、ホワイトソルガムきびです。では、山下さんが感じるホワイトソルガムきび粉入りパンが、米粉オンリーの米粉パンと異なる点を教えてください。
山下さん
そうですね、ホワイトソルガムきび粉を入れることによって、食感や匂いに違いが生じます。
米粉オンリーでは出せない、より小麦に近いパンを焼くことが出来ると実感しています。
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山下さんのベーカリーのミニ食パンやベーグル、カンパーニュをいただきましたが、どれも自然解凍するだけで、美味しく食べられるので驚きました。特にカンパーニュは普通のカンパーニュとまったく違和感ありませんでした。お客様の反応はいかがですか?
山下さん
当店のお客様はほとんどがリピーターで、米粉パンを求めていらっしゃるというよりも、美味しいからパンを買いに来てくれる方がほとんどです。
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素晴らしいですね。グルテンフリーだからというわけではなく、美味しいからリピートされているのですね。まだ食べたことがない方に、ぜひ山下さんのパンを食べていただきたいです。ホワイトソルガム粉入り米粉パンの種類や購入できる店舗を教えてください。
山下さん
自店舗(CUBREAD)の他、オンラインショップBASE、パン専用サイトrebake、自然食品れもんの木など。また、玉川高島屋さんでは月1(第2土日)でのタマガワグリーンマーケットで販売しており、パンの種類は食パンからフレーバーパン、お総菜パン、ハードパンまで多種に渡ります。
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それでは最後に今後のホワイトソルガムきび粉入り米粉パンの展開について教えてください。
山下さん
12月7日より3日間、東京ビックサイトで開催される「ものづくり補助金」の展示会に出展します。展示会では当店のパンがご家庭でも焼けるように、主にパンのミックス粉をご紹介する予定です。
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簡単に焼けるミックス粉があると、山下さんのパンがいつでも家庭で焼けますね。楽しみです。
今日はありがとうございました。
あとがき
お店は赤沢海岸の目の前で、お天気が良い日はテラス席から海を眺めてリラックスしたひと時が過ごせます。現在(2020年12月)は不定期にカフェとベーカリーを営業されていますので、営業日は事前にご確認ください。取材日はカフェの営業日でしたが、オープン直後から、電話予約されたお客様が続々と来店されて、地元の人気店である様子がうかがえました。ランチをいただきましたが、米粉パンの他、野菜のフリッターにもソルガムきび粉が使われていて、サクサクでおいしかったです!
山下由香
Organic Café M2/CUBREADオーナー
米粉マイスター
文化服装学院卒。イギリス留学後に元々興味のあった料理の世界へ。フードコーディネーターを経て料理人に。
10年前に静岡県伊東市にOrganicCafeM2をオープン。小麦粉アレルギー発症後に米粉パンを研究開発し、2019年に米粉パン専門店CUBREADをオープン。