アメリカ穀物協会は2018年3月6日に、「米国産ソルガムきび NY流グルテンフリー・クッキングデモンストレーション」を、北海道札幌市の国分北海道株式会社 セミナールームにおいて開催いたしました(後援:米国大使館農産物貿易事務所・在札幌米国総領事館、全日本司厨士協会北海道地方本部・札幌支部、国分北海道株式会社)。
当日は、ニューヨーク・ナチュラル・グルメ・インスティチュートでグルテンフリー料理を専門に教える山田英代シェフをデモンストレーターにお迎えし、NYスタイルのソルガムきび料理を、シェフや食品関係者など、食のプロフェッショナルの皆様にご紹介いただきました。
開会の挨拶では、まず全日本司厨士協会北海道地方本部 会長 小泉哲也氏より、これからの料理人は、美味しいだけでなく、ダイエットや健康、アレルギーを意識したメニュー作りが不可欠となるだろうということから、クッキングデモへの期待が寄せられました。
続いて 在札幌米国総領事館のジャスティン・トール領事からは、今後予定されている北海道での国際会議(G20)や外国人客の増加に伴い、食の多様性への対応の重要さ、また米国産ソルガムきびのような付加価値のある食材が必要になること、制限食であっても美味しさが大切であることが強調され、グルテンフリー料理への関心が伝えられました。
グルテンフリー食材として注目の米国産ソルガムきび
次にアメリカ穀物協会 プログラム/オフィス・マネージャーの星澤道代より、米国産ソルガムきびに関する基本情報をお伝えしました。ソルガムきびの大きな特長は、天然のグルテンフリー、古来穀物、全粒穀物、植物性たんぱく質、食物繊維を含んでいる点です。アメリカでのグルテンフリー食事法の普及や利用方法、小麦アレルギー以外では、健康志向の人々、アスリート、美容意識の高い人たちから支持されていることを紹介しました。
ひと昔前は、グルテンフリーの食べ物は美味しくありませんでしたが、ここ数年で味や品質も向上し、新製品も多く開発されていること、消費者には豊富な選択肢があります。ソルガムきびのもつ栄養素や特長は、米国の現在のフードトレンドと一致しているため、次世代のキヌアとして、レストラン業界、食品業界から注目されています。これからの日本市場でも、健康志向の方々、オリンピック・パラリンピックなどの国際競技や国際会議で日本を訪れる外国人旅行者にも、ソルガムきびのような付加価値のある食材のニーズは増加していくと予測されています。
山田英代シェフによる ニューヨークスタイルのグルテンフリー クッキングデモンストレーション
山田シェフが料理講師を務めるニューヨーク・ナチュラル・グルメ・インスティチュート(NGI)では、80%が動物性食材を使わない料理、20%が動物性食材を使う料理を教えているそうです。山田シェフが教えているのは、その中でもシェフを養成するクラスです。特にグルテンフリーに特化した料理を専門としていて、アメリカのグルテンフリー事情に詳しい山田シェフは、アメリカではキッチンをアレルゲンフリーに厳しく整えることよりも、表示が大切であると話しました。
たとえばレストランの場合、「このキッチンでは〇〇(アレルゲン食材)を使用しています」とはっきり明文化することで、未然にトラブルを防止しているそうです。また、NYのレストランでは、グルテンフリー専用のメニューがあるところが多く、注文する側も受ける側も簡単だそうです。
1品目のデモ・メニュー「ソルゴット」とは、ソルガムきびをリゾット風に仕立てたもの。イタリア料理であるリゾットの定義はクリーミーな米ということですが、ソルガムきび粒を使えば、粒とソースを別々に作っておいて、使うときに合わせて仕上げるだけで簡単に作れる、作り置きが可能なのがメリット。
ソースはカリフラワーを使ってクリーミーに仕上げた万能ソース。余計なものを使わないシンプルな料理法なので、出来るだけ品質のよい材料、オリーブオイルなどもかけるだけで料理が香り立つような良いものを使うことが大切と山田シェフは説明しました。
2品目はソルゴットと同じカリフラワーの万能ソースを利用し、ソルガムきびで出来たグルテンフリーのマカロニを合わせたクリーミーパスタ。ヴェジタリアンの世界では、カリフラワーは注目の食材でさまざまなレシピに重宝されているそうです。
ソースの味はクセがなく、カリフラワーが苦手な人でも食べやすく仕上がっていました。また、ソルガムきびなどグルテンフリーのマカロニは、パッケージに表記してある時間通りに茹でることがおいしく作るコツだそうです。
クッキングデモンストレーションのトークの合間には、グルテンフリー食事法を実践している山田シェフが、今回日本に一時帰国して食について困った話を披露。米、野菜の国なのに、とにかくグルテンフリーの食べるものがないことと、食品表示のあいまいさに苦労したそうです。
札幌では、かろうじて鍋料理のお店で野菜と豆腐だけの水炊きを特別に用意してもらってしのいだそうです。このように日本に来て不便を感じている海外旅行者は多いのではないでしょうか。
3品目は、卵・乳を使わなくてもふわふわに焼き上がる「チョコレートマーブルケーキ」。ふわっ、と仕上げるコツは、卵を使わないので白身の役割をはたす「フラックスエッグ」という粉末フラックスシードと熱湯を合わせたものを使用することです。そして液体材料は、室温以下に保ち、グアーガムまたはキサンタンガムを加えること、ドライ材料と合わせるときは、練らないでサクッと切るように混ぜることが重要。多少ダマになっていても大丈夫だそうです。練り過ぎるとケーキの立ち上がりが悪く、食べたときも重い食感になるので注意します。また、背の高いケーキにしたいときは、この生地を何枚か焼いてレイヤーにするとよいそうです。
ピーナッツバター チョコレートマーブルケーキ(PEANUT BUTTER CHOCOLATE SWIRL CAKE)のレシピ
ソルガムきび粉を使ってふわっと仕上げるグルテンフリー対応のおいしいケーキのレシピをご紹介しています。
4品目はアルコールのおつまみや、パンの代わりにもなりそうな「サクサク雑穀シードクラッカー」sorghum.jpにも問い合わせが多いクラッカー。山田シェフにレシピ開発の依頼をしたときに、クラッカーは必ず入れてほしいと要請しました。今回のレシピには、ソルガムきびの粉、ミレット(ヒエ・アワの英語の総称)粉、フラックスシード、ひまわりの種、ポピーシードなどが入っていて、乾燥玉ねぎと乾燥ガーリックパウダーが控えめなアクセントになっています。なくても大丈夫。クラッカーのレシピはグアーガムやキサンタンガムを使用していないので、生地をつなぐ粘着剤をタピオカ粉と粉末フラックスシードと熱湯で作って入れます。粘着剤を使用するというヒントは十割蕎麦から得たそうです。ただ、打ち粉を使わないので、ラップを生地の上に載せてめん棒で延ばします。
今回のイベントでは、1品のデモ終了後にすぐにその料理が提供されるというスタイルをとったので、参加者の方からも、すぐに試食出来てわかりやすかった、印象に残ったという意見をいただきました。ケーキとクラッカーは一緒に盛付けましたが、クラッカーはメープルシロップなどの甘味に置き換えるとスイーツにも応用可能ですので、プレゼンテーションの参考にもなったのではないでしょうか。グルテンフリーに関する基本情報、アメリカでの動向、レストランでのアレルギー対応の様子、乳・卵の代わりになる食材などが分かったと、参加者の方々からのフィードバックがありました。
今回の山田シェフからは、グルテンフリー料理は材料にも制限があるので、レシピ開発には失敗を恐れずに、とにかく何度も繰り返し試してみること、そして本物の味を知らないと美味しいものは作れない、というお話がありました。また、ソルガムきびの粉はニューヨークでもほとんどのスーパーマーケットにおいてあり、普及が進んでいますが、ソルガムきびの粒はニューヨークではまだあまり見かけないのとのことでした。粉はキヌアなどと違って匂いやクセがないのでグルテンフリーのお菓子やパン作りのブレンドに最適。また粒は時間がたってもベタっとしないので、ソルゴット(ソルガムきびのリゾット風)など、煮る料理にもとても合うということでした。
デモンストレーションの最後には、キッチンとステージで山田シェフのアシスタントを務めた全日本司厨士協会北海道地方本部所属の奥島睦美氏(シャトレーゼ ガトーキングダムサッポロ)、水崎彩夏氏(札幌グランドホテル)、NGIで山田シェフからグルテンフリー料理を学んだ星川聖子氏 (ape cucina naturale)にもステージに上がっていただき、紹介がされました。山田シェフいわく、優秀なアシスタント3名のおかげで、滞りなくデモンストレーションと試食が出来たそうです!
最後に、全日本司厨士協会北海道地方本部札幌支部 支部長 橋本昇氏より、これまで食べたソルガムきびの料理の中でも特に美味しい料理であったとお褒めの言葉をいただきました。
また、アメリカ穀物協会 日本事務所 代表 浜本哲郎より、素晴らしいキッチン・会場を提供してくれた国分北海道株式会社様、ご後援いただいた全日本司厨士協会北海道地方本部ならびに札幌支部様、ソルガムきびで最高のグルテンフリー料理を披露してくれた山田英代シェフにお礼の言葉が述べられました。
当日は雪の中、大勢の食のプロフェッショナルの皆様にお越しいただきました。改めてお礼申し上げます。
当日の様子を動画でご紹介
「米国産ソルガムきび NY流クッキング・デモンストレーション」の様子は、こちらの動画からもご覧いただけます。