アメリカ穀物協会は、2020年1月22日に食品ソルガム ラウンドテーブル会議&ランチョン(於・ホテルインターコンチネンタル東京ベイ)を開催いたしました。
当日は、第一部の食品ラウンドテーブル会議と、第二部の米国産ソルガムきびランチョンの二部形式で行われました。第一部の食品ラウンドテーブル会議では、アメリカのソルガム生産者のプレゼンテーションが行われました。プレゼンテーション後には、会議参加者と生産者との間で活発な質疑応答が行われました。
今回は前編として、第一部の食品ラウンドテーブル会議の様子をレポートいたします。
第一部 食品ラウンドテーブル会議
第一部のラウンドテーブル会議は、進行役である日本事務所プログラム/オフィス・マネージャーの星澤道代より、開会のご挨拶と、米国産ソルガムきびに関する概要や最新トレンドのご紹介からスタートしました。
ソルガムきびはイネ科の食物で、日本では「たかきび」「モロコシ」「ソルガム」などと呼ばれています。アメリカ穀物協会では、食品グレードのグレインソルガムについて、食品・穀物であることを消費者の方にとってより分かりやすくするために、2013年より従来の「ソルガム」に「きび」を付けて、「ソルガムきび」と呼んでいます。最近、雑穀の業界では呼称を「ソルガム」に統一する動きがあるそうです。ソルガムという名称が広く使われることによって、さらにソルガムきびの受容が進むと期待されます。2019年にアメリカのナチュラル・スーパーマーケット「ホールフーズマーケット」が発表した2020年注目の食材リストにソルガムきびも挙げられています。日本でも小麦アレルギーの方や健康志向の方への食材として、近年利用が広がっています。
生産者 クラーク・ビブ氏(カンザス州グレインソルガム委員会 理事)によるプレゼンテーション
カンザス州グレインソルガム委員会の理事を務めるクラーク・ビブ氏は、9800エーカー(約4000ヘクタール)の農地と3000エーカー(約1,200ヘクタール)の牧草地で長年のパートナーと共にビブ&ナイスウォンジャー農場の経営を行っています。通常は2400エーカー(約970ヘクタール)のグレインソルガム、3500エーカー(約1, 400ヘクタール)の小麦、さらに1200~1400エーカー(約490~570ヘクタール)のトウモロコシと大豆を作付けしています。また、小規模のスターター畜牛肥育場と400頭の商業用アンガス牛の小子取繁殖を行っています。
ビブ&ナイスウォンジャー農場における2019年のソルガムきび生産状況は、春に豪雨があり湿潤であったため作付けには苦労したものの、夏以降の生育状況は良好で、収穫期には乾燥した理想的な天気に恵まれて、収穫は早期に終了しました。結果、平均以上の単収と素晴らしい品質のソルガムきびが収穫できました。
ビブ&ナイスウォンジャー農場のあるカンザス州南西部の気候は、非常に乾燥しているので、ソルガムきびの栽培に適しており、今後も生産量の増加が期待されています。
生産者 シェイン・スップス氏(ユナイテッドソルガムチェックオフプログラム 理事)によるプレゼンテーション
二人目のプレゼンテーターでは、ユナイテッドソルガムチェックオフプログラムの理事を務めるシェイン・スップス氏です。カンザス州西部にあるスップス農場は、祖父より3代続く家族経営の食品用ソルガムきび生産者です。4,850ヘクタールの非灌漑農地において、作付けから収穫まで全ての作業を家族だけで行っています。毎年、ソルガムきびと種子用白小麦を約1,620ヘクタールずつ栽培しています。スップス農場におけるソルガムきびの生産量のうち、約75%は食品グレードのグレインソルガムを栽培しています。小麦は今季、収穫まで至ったのが作付けの30%程度だったため、来季からはソルガムきびの栽培をもっと増やそうと考えています。スップス農場では、ソルガムきびの生産量の約半分を保管しています。そのため、保管の環境を整えることが重要な関心事であり、今後、保管容量をもっと増やそうと計画しています。
カンザス州は、全米で60%のソルガムきびを栽培しており、トップの収穫量を誇っています。カンザス州の気候は、ソルガムきびの栽培に適しており、スップス農場では、1ヘクタールあたり、6.3トンのソルガムきび収穫量を目標としています。
収穫期におけるカンザス州の気候は気まぐれで、毎年異なります。2018年は湿潤のため収穫が遅れましたが、2019年の収穫は、乾燥した状態のため早く終えることができました。乾燥した状況のため単収は目標より20%減少しましたが、高品質のソルガムきびが収穫できました。
スップス農場では、ソルガムきびこそが農場経営の鍵を握ると考えています。今後は、食品用途のソルガムきびの生産量をさらに増やしていく予定です。
参加者とのディスカッション
生産者からのプレゼンテーションに対して、参加者よりさまざまな質問が投げかけられて、有意義なディスカッションの時間となりました。
質疑応答の例をご紹介
(スップス氏):ほかの穀物などが混ざらないように徹底した管理を行っています。小麦とソルガムきびの収穫物は、それぞれ指定しているサイロに収めていて、徹底した管理を行っています。また、農業機械、コンバインはしっかりとクリーニングと洗浄を行っています。
(スップス氏):両方です。
(ビブ氏):私の農場で栽培している飼料用途のグレインソルガムは、地元の生協へ出荷しています。そこから先は、地元のエタノール工場へ行く場合もありますが、多くはメキシコへ輸出されています。
(スップス氏):「届ける」という観点からすると、一番の課題は輸送コストです。カンザス州は、ソルガムきび生産量トップを誇っていますが、同時に全米のほぼ中心に位置しているため、どの港へ向かうにしても遠く、輸送コストをどうするかが課題となっています。
(スップス氏):カンザス州の気候は、ソルガムきび生産に適しています。それに加えて、現在、食品用途としてのソルガムきびの需要が伸びており、そこで求められているのが品質の高さです。スップス農場で生産している高品質なソルガムきびは市場性があり、需要に応えられると自負しています。
(スップス氏):例えば、私の農場とビブさんの農場とはそれほど距離は離れていませんが、気温や土壌の質が異なります。ビブさんの農場は少し南に位置しているためか、より砂っぽい土壌です。
さらにカンザス州より西のコロラドの方へ行くと、夜間ぐっと気温が下がる気候になります。これはグレインソルガム栽培にとって大きなダメージとなります。グレインソルガムの栽培には高温の気温にさらされることがポイントとなります。北や西へ行くと、気象条件が変わってくるため、おのずと生産量が変わってきます。
(スップス氏):2019年度はポップソルガムや4種類の異なる食品用ホワイトソルガムきびを作付けしました。
その他、でんぷん質が高いワキシー(もち性)のソルガムきび(バーガンディ)の栽培経験があります。私の農場のポリシーは、マーケットのニーズに応えていくことを大切にしています。ワキシーソルガムきびは、品質も収量も上げることはできましたが、まだ市場規模が小さいため、マーケットのニーズが追いついていないのが現状です。また、ブラックソルガムきびについても、まだマーケットの需要が育っていないところがあります。
(スップ氏):私は、農場から収穫後すぐに、キッチンのカウンターの下に常備しています。日本でいえば主食のコメのような基本食のような感じで捉えています。
私は、グルテンの耐性がないので、常にどういう料理に使えるかを模索しています。
ユナイテッドソルガムチェックオフのWEBサイトでは、ソルガムきびのレシピや動画がアップされているので、ぜひご覧ください。
⇒ユナイテッドソルガムチェックオフのWEBサイト:https://www.simplysorghum.com/