

長年、栄養コンサルタントをしていると、「どんなサプリメントがおすすめですか?」という質問をよくいただきます。もちろんサプリメントで栄養を補うのは悪いことでありませんし、私自身も摂取しています。しかし、好きなものだけ食べて、栄養はサプリメントで補えばいいという考え方はとても危険です。
サプリメントによってはメーカーの利益を優先しているのでは?と疑問を抱くような増量剤や結合剤、その他いろいろな成分が入っているものも多く見られます。こうしたサプリメントを摂り続けると、肝臓や腸内細菌叢に負担をかけ、かえって健康を害してしまうリスクもあるのです。特に極端に安価なサプリメントは注意が必要で、原材料をしっかり見極めることが大切です。

サプリメントに頼る前に、まずはできるだけ多様な食材を使った食事でバランスよく栄養を摂ることが大前提です。栄養素はそれ単体で効果を発揮するのではなく、食材に含まれる他の栄養素との相乗効果によって体に届くものなので、ホールフード(丸ごとの食材)を摂ることが大切です。
Nature is the most sophisticated supplement (自然は最も洗練されたサプリメント)という言葉の通り、どんなサプリメント剤よりも、古くから人類が口にしてきた自然の食材の方が、はるかに力強く私たちの体を支えてくれます。
地球上には15万種類以上の食用植物が存在し、その多くにフィトケミカルと呼ばれる機能性成分が豊富に含まれています。これらは免疫力を高めたり、病気を予防したり、美しい肌を保つためにも欠かせない成分です。特筆すべきは、その強力な相乗効果です。例えばニンジンを食べた時、ベータカロテンというフィトケミカルだけでなく、その他の何百種類ものフィトケミカルやビタミン、ミネラル、食物繊維も一緒に摂取できるので、それらの相乗効果でより高い健康効果が期待できるのです。だからこそ、なるべく色とりどりの野菜や果物を、バランスよく食べるように心がけましょう。

ソルガムきびは南アフリカ原産の古来穀物で、米、小麦、とうもろこし、大麦と並んで世界五大穀物のひとつです。紀元前3000年頃から栽培されていた長い歴史を持ち、日本には15世紀頃にインド、中国を経て伝わったと考えられています。「ソルガム」というカタカナ表記を目にすると新しい印象を受けるかもしれませんが、日本では「たかきび」「もろこし」などの名前で親しまれてきた昔ながらの食材です。「たかきび」は有名な昔話「ももたろう」に登場する「きびだんご」の原材料だと聞くと、ぐっと身近に感じるのではないでしょうか。
ソルガムきびは高温や乾燥に強く、自然の降雨だけでも生育できるので、灌漑整備を作って水を与える必要がなく、地球環境にも優しい穀物です。さらに白米よりも食物繊維が豊富で、食後の血糖値上昇を抑える難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)も含んでいます。そのため、21世紀の今、「古くて新しい健康・環境指向の作物」として再評価されているのです。
今回ご紹介する「ソルガムきび粉のカラフルキッシュ」は、タルト生地にソルガムきび粉を使い、ホールフードの野菜をたっぷり加えています。野菜の色は栄養素に由来しているので、なるべく異なる色の野菜をたくさん使うことで、見た目が美しいだけでなく、栄養価の高いキッシュになります。サプリメントに頼らなくても多様な栄養を摂取できて、相乗効果も期待できる、嬉しい一品です。野菜のカラフルなビジュアルは、華やかなパーティーにもぴったりです!