私は栄養コンサルタントとして長年活動していますが、最初からグルテンを避ける食生活を送っていたわけではありません。若い頃は、朝食にベーグルとジャム、昼食にマフィン、間食にも小麦を使ったお菓子といった具合に、小麦製品に夢中でした。しかし、27歳の頃に体調を崩し、IgA腎症という腎臓の自己免疫疾患だと診断されました。病院に通っても症状は全く改善されず、原因を突き止めるために自分で様々な研究結果を調べたところ、小麦・ライ麦・大麦に含まれるグルテンという成分が自己免疫疾患に関係していることを知りました。そこで、試しにグルテンを含む食品を一切食べないようにしたところ、徐々に体調が回復し、1年後の検査では腎臓の異常を示すIgA値という数値も正常値に戻ったのです。これには主治医も驚いていました!
当時はグルテンが引き起こす病気について今ほど知られていなかったため、自分がグルテンにアレルギーを持つ体質だとは思いもよりませんでした。そのため、パンやパスタなどのグルテンを含む食品も普通に食べていた結果、知らず知らずのうちに内臓が炎症を起こし、自己免疫疾患や体調不調につながっていたのです。グルテンに対するアレルギー体質は遺伝の場合もありますが、花粉症のように成人してからある日突然発症することもあります。戦後の高度経済成長と共に食生活の欧米化が進み、パンやパスタが急速に普及した日本では、私と同じように、気づかないうちにグルテンによる体調不良に陥っている人も多いと思います。また、グルテンに対するアレルギーがない人でも、グルテンを控えることで腸内環境が整い、お肌の状態が良くなったり、集中力が高まったりすると効果もあるので、ぜひ一度みなさんに試していただきたい食事法です。
グルテンを避けることで直面する大きな課題のひとつが、パンを食べられないことです。グルテンフリーダイエット(グルテンを摂らない食事法)が先に広まった欧米では、グルテンフリーでも美味しいパン屋さんやケーキ屋さんが多数存在します。例えばパリのChambelland(シャンベラン)や NOGLU(ノーグル)、ミュンヘンのEcht Jetzt(エヒト・イェツト)は、私のお気に入りのお店です!一方、日本では残念ながら美味しいグルテンフリーのパンになかなか出会えません。また、グルテンフリーであっても、私の体に合わない成分が含まれていることもあるので、注意が必要です。そこで、どうにか自分で作れないかと長年試行錯誤した結果、最も使い勝手のよい小麦粉の代替品は、クセのない風味で調理しやすく、使いやすいソルガムきび粉だという結論に至りました。ただし、ソルガムきび粉だけで作るのではなく、そば粉や米粉など、複数の粉をブレンドすること。そうすることで、深みのある味わいの美味しいパンが生まれます。私は焼き上がったパンをスライスして冷凍し、食べる時に少量ずつトースターで温めていただいています。アボカドや卵をのせると栄養バランスもよく、見た目も美しいリッチな一皿になりますよ!